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ヨガ初体験の巻。下

「さあぁぁぁぁ今度はぁ、足をこうしてぇぇ、腕をこうしてぇぇ、はいこれは・・・のポーズですね。」ちなみにここの「・・・」には何だかありがたそうな神様のお名前が入ります。早口で(しかもこの名前を言うところだけ早口で)言われてしまって聞き取れず。とにかく普段はあまりしない格好です。普段しない格好なので確かに色々な筋肉がほぐれていくのを感じます。感じてはいるのですがなんて言うのでしょうか、体の芯まで伸びた感じがしないのです。うん?なんでだ、と思いましたらこの師範、非常に動きが速い。動きというかなんて言うのでしょうか。例えば足を伸ばすポーズを一つの例に取り出してみましょう。師範はそのポーズの姿勢を説明し始めます。と、このときもう既に師範はそのポーズをとりながらその説明をしているんです。だからその説明が終わるともう次の姿勢を取り始めそのポーズが完了している頃にはもうその次のポーズの説明も終了しています。つまり我々はポーズの説明が有ってからそのポーズを取ろうとするのですがそうするともう次の姿勢の説明が始まっていると言う状況になっています。言うなれば何となくそのポーズは取ってみたけれど果たしてそのポーズがどのように体に効いているのかを実感できぬままもう次のポーズをとらざるを得ません。「師範よ、急ぐ無かれ。」僕は心でそう叫びます。「このポーズなかなか気持ちよいからもう少し、せめてあと5秒下さい。私に時間を下さい。」こう叫びます。あくまで心の中で。しかし無情にも師範は次々と技を繰り出してきます。とにかく付いていくことで精一杯。忙しいのですがしかしそれはそれで中々気持ちよいモノがありますが。

...と「今度はぁぁぁぁぁ、はぃぃぃ、右の鏡の方を向きましょうぉぉぉぉ。」ここで今の状況を整理しておきましょう。僕は今一番右の一番後ろから二番目にいます。先ほどまでは正面を向いていました。ちなみに右側にも全面の鏡があります。はい、ただ今師範は全員に向かって右の鏡に向かいましょう、と言いました。これは先ほどとは随分状況が違います。先ほどまでは僕は端っこの方で皆様の体の動きを何となく真似していたわけです。さりげなさを装い気配を消していたくらいでした。ところがこの右向け右の号令はオセロのコマがたった一手で全て裏返ってしまったくらいの状況の変化をもたらしました。「おっとこれは困った、最前列だ。」師範はこう言います。「手を前についてぇぇぇぇ、四つんばいになりぃぃぃぃ」いやいやいや、何もこのときに四つんばいではなくても良いのに。また僕は心で叫びます。「顎をぐーっと上に上げまぁぁぁぁぁす。誰かに上に引っ張られている感じでぇぇぇぇ」...ってどう考えても自分で顎をつり上げています。必死の形相で四つんばいになりながら顎を上にしゃくれ上げています。大きな鏡の前の最前列です。「さぁぁぁぁ、今度はぁぁぁ、木になりまぁぁぁす。」えええっ!今度は木ですか。木にはなれないです。どうしたって無理だと思います。また心で叫びますがその声はどうも師範には届いていないようで「はいぃぃぃ片足の足の裏ををもう片方のモモの所に持って行きぃぃぃ...」なるほど片足で立つわけですね。と言ってもこれが結構大変です。片足立ちなんて滅多にしないですからね。「はいぃぃぃぃ、そしてぇぇぇ手をうえに持って行き、ひねりまぁぁぁす」「これはナントカノナントカノナントカノ神のポーズです」また早口でした。とにかく全員で一意団結して木になります。頑張って木になってみせます。もうへとへとです。

...と思っていましたら「はい、今度は横になりましょぉぉぉぉう」「そのままぁぁぁぁ、手を床につけてぇぇぇ、深〜〜く息をすいまーす。そしてはきまーす。リラックスしているはずでぇぇぇす」ビックリしましたほんの僅かですが本当に僕はそのままそこで寝てしまいました。どんなに疲れていても電車でもまずほとんど寝ませんし。どちらかというと寝付きが悪い方なのですがそんな僕が完全に意識が遠いところに行っていました。恐るべしヨガ。「はい、これで今日は終わりです。ありがとうございました。」といって蛍光灯の明かりが付きまして我々の長い旅は終わったのでした。まだまだ深いことは分からないが一言で言えば悪くなかったぞ、と言うことです。

その晩夜寝る前に部屋で「木のポーズ」をしてみました。木と言うよりは「傘お化け」だな。そう思いながら眠りについたのでした。



posted by nn :